デジタル技術の進化により、学校教育は大きな変革期を迎えています。教育におけるICTの活用として注目されているものの一つに、電子黒板があります。電子黒板は既存の黒板を進化させ、教育現場になくてはならない存在になりつつあります。
本記事では、電子黒板の便利機能そして実際の導入事例を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Table of Contents
電子黒板とは- 従来の黒板との違い
電子黒板とは、パソコンの画面を投影し直接文字や図形を書き込める黒板のことです。従来の黒板やホワイトボードではできなかった、画像や動画の表示、タッチ操作、データ保存などが可能です。
具体的には、パソコンで準備した教材を提示し電子ペンで直接書き込んだり、拡大表示したりできるため、従来のチョークで書くだけの黒板よりも、生徒にとって視認性が向上します。さらに、スピーカーを通じて動画や音声教材も使えるため、授業内容を視覚・聴覚的に伝えやすくなります。また、書き込んだ内容は、データとしてパソコンに保存しておけるため、授業後も繰り返し活用したり、見直したりできます。授業後に黒板を消す手間も不要で、チョークの粉を吸い込むことなく、後片付けも簡単です。
教育現場における電子黒板の普及率
学校でどれくらい電子黒板が普及しているかを見てみましょう。文部科学省が実施した調査で、電子黒板を含む大型提示装置の普通教室における整備率が発表されています。この調査によると、令和4年3月時点で、83.6%の整備率となっています。平成31年3月時点では52.2%、令和3年3月には71.6%となっており、年々普及が拡大していることが分かります。
学校種別毎の普及率
これを学校種別ごとに見ると、普通教室における整備率が一番高いのは、中等教育学校の91.0%。次いで小学校で88.1%、義務教育学校で85.1%、中学校では83.9%となり、高等学校では79.3%となります。特別支援学校では48.6%です。高等学校よりも小中学校での整備率が高い結果となっていました。
出典:文部科学省「令和3年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」
電子黒板の主な機能
電子黒板には多くの便利な機能がありますが、その中でも主要な便利機能をいくつか紹介いたします。
主な機能1. 画像や動画の投影
電子黒板の主な機能の一つに、画像や動画を投影できる点があります。パソコン等を接続することで、パソコンの画面をそのまま電子黒板に投映できます。これまで教室で使われてきたプロジェクターや大型テレビの用途です。しかしながらプロジェクターやテレビとは異なり、指や電子ペンを使って直感的に拡大・縮小などが可能であることが電子黒板の特徴です。視覚的に情報を伝えることができ、生徒の理解を深めやすくなります。
主な機能2. 文字の書き込み
電子黒板は文字の書き込み機能を備えており、直接文字を書き込むことができます。この機能により、従来の黒板やホワイトボードのようにその場で解説やメモを追加することが可能です。ペンの太さや色の種類も豊富にあり、消しゴム機能もあります。部分的に消すことも可能なので、書き・消しをしながらの演習問題にも活用できます。
主な機能3. タッチ操作
タッチ操作は電子黒板の大きな機能の1つです。大人も子どももスマートフォンを使うようになった今では、さながら「大きなスマホ」と言ってもよいでしょう。タッチ操作は非常に直感的であり、特別な訓練を必要としないため、教師も児童生徒も簡単に使い始めることができます。
主な機能4. データの保存
従来の黒板は、生徒は教師が書いた板書を書き写さなければ授業の振り返りが出来ませんでした。また内容を消すと再度見ることができませんが、電子黒板はデータを保存できるため、書き直しの手間が省け、重要な情報をいつでも参照できます。例えば、授業中に説明した内容や書き込みをそのままPDF形式で保存し、後で生徒に共有や配布することができます。これにより、欠席した生徒でも授業内容を簡単に確認できるようになります。電子黒板のデータ保存機能を活用することで、学習効果の向上も期待できるのではないでしょうか。
電子黒板の種類と選び方
従来の黒板やホワイトボードに代わり、インタラクティブな授業を実現する電子黒板。学校現場では、ディスプレイ(テレビ)型またはプロジェクター型のどちらかが導入されていることが多いです。
1. ディスプレイ型(テレビ型)<電子黒板機能付き>
ディスプレイ型の電子黒板は、その鮮明な画質が大きな特徴です。提示された画像や映像は「明るい、キレイ、カラフル」です。ディスプレイは、2Kや4K等解像度や大型化が進歩していて、明るい教室の中でも、細かい部分もくっきりと表示され、色の再現性も高いため、映像や画像が効果的な授業においてはより分かりやすく伝わるでしょう。そこに電子ペンで書き込むことで解説もスムーズにでき、授業理解の促進につながります。
2. プロジェクター型<電子黒板機能付き>
プロジェクター型の電子黒板は、大画面化を実現できる点が大きな魅力です。プロジェクタータイプは壁やスクリーンに映像を投影するため、設置場所やスクリーンのサイズによって表示する映像のサイズを自由に調整できます。例えば、小規模な教室ではコンパクトなスクリーンを、大規模なホールや体育館では非常に大きなスクリーンを使用することが可能です。このように、場所に応じた最適な画面サイズを提供できるため、さまざまな教育環境に対応が可能です。
ディスプレイ型とプロジェクター型の選び方
ディスプレイ型とプロジェクター型の電子黒板の違いに着目し、それぞれの特徴とメリットを解説したこちらの記事もぜひご覧ください。
「教室や授業に合う電子黒板はどれ?ディスプレイタイプとプロジェクタータイプの違い・選び方を解説」
学校における電子黒板の導入事例
電子黒板は現在、多くの学校で導入され、教育の質を向上させるために活用されています。以下では、具体的な導入事例を紹介しその効果ついて解説します。
各学校において、電子黒板の導入により授業内容がどのように変わり、生徒や教師にとってどのようなメリットが生まれたのかを見ていきましょう。
「進化した黒板」による授業スタイルの「自然な変化」(宮城県岩沼市立岩沼西小学校)
宮城県岩沼市立岩沼西小学校では、プロジェクター型の電子黒板「ワイード」を活用し、黒板とデジタル教材の融合による授業が行われています。「ワイード」は広い投影範囲を持ち、従来の黒板と組み合わせて使うことで、児童全員にとって視認性が高く、理解が深まりやすい学習環境を提供しています。たとえば、デジタル教材や動画を一度に大きく映し出し、黒板の文字と一緒に表示することで、資料の補足説明がしやすくなりました。また、学習の進行に合わせて画面の一部を拡大表示したり、保存機能を使って授業の記録を取り、後で見直しや復習に役立てることも可能です。このように、アナログとデジタルを組み合わせた電子黒板の活用が、ICT教育の効果をより高める一助となっています。
「感覚的に使える機能に満足」卓上設置でも問題なし(開志学園高等学校/新潟)
新潟県の開志学園高等学校では、2023年4月にウルトラワイドプロジェクター「ワイード」を導入しました。同校では、壁面や天井への固定設置ではなく、卓上に置いて使用しています。理科の島田先生は、ワイードの大画面表示や電子ペンによる直感的な操作性を評価し、授業の質向上に役立てています。また、2画面表示機能を活用し、資料画像と動画を同時に投影するなど、効果的な授業展開を実現しています。
「明るさや鮮明さを重視」板書スペースを確保した効率的な授業展開(日高町立中津小学校/和歌山)
和歌山県の日高川町立中津小学校では、2024年6月にディスプレイ型電子黒板の「スライード」75型を2台導入しました。同校は、電子黒板の明るさや鮮明さを重視し、事前にプロジェクター型電子黒板と比較検討のうえで「スライード」を選定しました。既存の曲面黒板と組み合わせる形で設置され、授業中に電子黒板を左右にスライドさせることで、板書スペースを確保しつつ、効果的な授業展開が可能となっています。
まとめ
本記事では電子黒板について、機能や種類、選び方、活用例を紹介しました。電子黒板では、画像や動画を見せたり、自由に書き込みをしたりができます。授業にうまく取り入れることで、より活発な授業ができるようになるでしょう。
株式会社サカワでは、「第15回 EDIX(教育総合展)東京」にてサカワブースにご来場頂いた方に、電子黒板やプロジェクター等の提示装置等、教育ICT機器に関するヒアリングをさせていただきました。そのヒアリング結果から、電子黒板やプロジェクターの導入後に様々な悩みをまとめたレポートを作成しましたので、ぜひご一読ください。